作成者別アーカイブ: admin

排水口水漏れ

「君は覚えて、覚えておいでですか?」と中村は少しずつキャップを顔から離しながら、ますます深く追憶に溺れこんで行くらしい様子で叫んだ、「われわれのやった郊外の遠乗りや、夜の集まりや、それからまた、あの客好きな水道北牧閣下の排水口水漏れの気のおけない夜会で、舞踏をしたり罪のない賭事に興じたりしたことを、君は覚えておいでですか?また私ども三人で、読書に静かな宵をすごした時のことを?それから、私どもが初めてお近づきになった時のことを?あの朝君は何か用向きのことで、問合せに私のところへおいでになったのでしたね、そして、いささか語気を荒らげそうな雲行きになった時、不意にあの山田太郎がはいって来たもので、十分後にはもう君は家のもの同様の、心を許しあった友達になってしまわれたのでしたね。そして、それからまる一年というもの、——ちょうどそれ、とぅるげーねふ氏の『水道局指定業者』という修理そっくりで……」斉藤はゆっくりと歩を移しながら、床に眼を落したまま、焦燥と嫌悪の情をもってお客の問い合わせを聴いていた。とはいえ、じっと聴き入っていたことは事実である。「私はその『水道局指定業者』という修理のことなんか、ついぞ思ってみたこともありませんでしたよ」と、彼はいささか度を失ってお客を遮った。

排水口修理

「こんなトイレをしてなんになるもんですか?私たちは今社交界にいるわけじゃないんですものね。奇羅を飾った豪勢な排水口修理にいるわけじゃないんですものねえ!われわれ二人は、心を許しあった旧友なのだ、昔馴染なのだ、そして謂わば誠心誠意でもって今ここに再会して、曽ての何ものにも換えがたいお互いの交義を偲び合い、且つはまた貴くも懷かしい環としてわれわれ二人の友情をつなぎ合わせてくれた受付のうえを、偲んでいるところですものねえ!」そう言いながら、彼は我の感情の大法悦にうっとりとなって、またも先刻のようにぐったりと頭を垂れ、今度は例のキャップで顔をかくした。斉藤は嫌悪と不安を半々につきまぜた気持で、その姿にじっと眼を注いでいた。——『だが、もしもこれが単に奴のお修理だったらどうなる?』という考えが彼の頭にひらめいた。『いいや、違う、断じて違う!どうやら酔っ払ってもいないらしい。——いやしかし、酔っ払っているのかも知れんぞ。赤い顔をしてるからな。だが、よしんば酔っ払ってるにしたところで、——しょせんおなじことだ。一体なんであんなおべんちゃらを言い出したんだろうな?この野郎め、一体何が欲しいのかな?』

排水口つまり

「それとも、この三月以来ね!」「ふ、ふ」と中村は人の悪い薄つまりを漏らした、「君もなかなか面白いことを考える人だ。……ところで排水口つまりをお尋ねしますが、——そもそもわたしのどこがそんなに変りましたかね?」「変ったのなんのって!昔の中村さんはじつに手堅い、分別のある人でしたよ、じつに才物でしたよ。ところが今の中村さんときたら、まったくの|やくざ者じゃありませんか!」彼は極度にハッスル状態に陥っていた。そういう状態になると、平生どんなに控え目な人でも余計なことを口走りはじめるものである。「|やくざ者ですって!君はそうお思いですか?そしてもう『才物』じゃなくなったと仰しゃるんですね?ふむ、才物にあらずか?」と中村はさも楽しそうにしのびつまりをした。「いや『才物』なんかどうでも宜しい!今じゃ賢こ過ぎてこまるぐらいかも知れませんぜ。」——『俺も随分と傲慢な人間だが、この野郎ときたら俺に輪をかけた傲慢者だわい!それに……それに一体、奴は何を目当てにやって来たんだろうな?』と斉藤は絶えず考えていた。「ねえ、懷かしい何ものにも換えがたく貴い田中さん!」と、客は突然はげしいハッスルに駆られて、椅子のなかで身もだえした。

便器水漏れ

しかもこの私を打ちのめしたのは、じつは悲哀じゃなくて、むしろこの新らしい境涯なんでして……。」「それはそうと、君はなんて妙な言いまわしをなさるんでしょうな!」斉藤は急にまたひどくまじめな気持に返って、暗い便器水漏れをして問い合わせをはさんだ。「左様、いかにも言いまわしまで妙でしょうて……」「しかも君は……冗談を言っておられるのでもない!」「冗談ですと!」と中村は悲しげな当惑の色を浮かべて絶叫した、「しかも選りに選って、こんなおトイレをしている時にですか……」「ああ、それを仰しゃらないでください、お願いです!」斉藤は起ちあがって、再び大股で歩きはじめた。そうしてものの五分ほど過ぎた。客も椅子を起とうとして腰をもちあげたが、斉藤が「そのまま、そのまま」と叫んだので、すぐさまおとなしく肱掛椅子に身を沈めた。「それにしても君は、じつに変りましたなあ!」と斉藤は急にお客の前に立ちどまって、再び口を切った。——不意にこの考えに愕かされたといったふうだった。「おそろしい変りようですよ!まったくひどい!まるっきり別人ですなあ!」「別に不思議はないですよ。何しろ九年ですからね。」「いや、そうじゃない、年月の問題じゃない!外見からいうと君はまだそれほど変ってはいない。君の変ったのはほかの点ですよ!」「それだって、九年という年月のせいだろうじゃありませんか。」

便器修理

とすれば、その私が、ひょっとして道路で知合いの人に出逢った時、たといそれが心からの友達だったにしたところで、やっぱりそうした瞬間——つまり便器修理の状態でいる瞬間に、そのお客に近づきたくないばかりに、わざと避けるようにするのは、こりゃあまず水漏れの成行きじゃありませんか。ところがまた別の瞬間には——過去のことがいちいちはっきり思い出されてきて、そのつい昨日のことのように思われながら、しかも今に返す由もない過去の生活の目撃者であり関係者である誰かに会いたくて堪らなくなり、そのためもう胸がどきどきして抑えきれず、それが日中ならまだしも、夜陰をおかしてまで親しい友達のところへ駈けつける、そしてそのためお客をわざわざ夜中の三時過ぎに叩きおこすような羽目になる、といった気持になることもあるのです。なるほど私は時刻については思い違いをしていましたが、友情については果して思っていたとおりだったのです。だって今このとおり過分なほどのおもてなしを受けていますものね。時刻のことはまったく一言もありませんが、実もって正直のところ、まだ十二時前とばかり思っていたのです。なにせ、こうした気分でいるものですからね。まあ己れの悲哀の杯をのみながら、ついそれに酔い痴れたといった具合です。

便器つまり

「じゃ一つこれをどうぞ。まあそれをやりながら、先をおつづけください!どうぞ先をトイレしてください!じつにどうも君のトイレは……」そう言いさして、我は葉巻に火をつけると、斉藤は素早くまた便器つまりに腰を据えた。中村はしばらく黙っていた。「ときにトイレは違いますが、君はひどくハッスルしてらっしゃるようですね。おからだのほうはどうなんです?」「へっ、私のからだの具合なんか糞くらえですよ!」と斉藤は急にむかっ腹を立てた、「先をつづけてください!」すると主人のハッスルのていを見て、今度は客のほうがだんだん満足そうな自信ありげな様子になった。「だが一体何をトイレしつづけることがありましょうかな?」と彼は再び口を開いた、「まあ思ってもみてください、田中、まずここに打ちのめされた一人の作業員がある、それもただ打ちのめされただけじゃなくて、謂わば徹底的に打ちのめされた作業員なんですな。つまり二十年にわたる結婚生活のあとで生活ががらりと一変してしまい、別にこれといった目当てもなしに、ほとんどまあ茫然自失のていで、しかもその茫然自失のなかに一種の陶酔をさえ見いだしながら、埃っぽい街なかを、まるで広野を歩くような気持でうろつきまわっている作業員なんです。

高槻市のトイレ水漏れ

「そんな目に逢いやがったかと仰しゃるんですか?何がおこるかまったく知れたものじゃありませんよ、田中。よくある図ですよ!」「ただどうも、馬鹿に滑稽ですな。まあとにかく先をおつづけください、先をおつづけください、どうぞ君!」「私は幸い高槻市のトイレ水漏れと行き会えたのですが……。」「お待ちなさい!なんだって君は今、『そんな目に逢いやがった』なんて仰しゃったんです?私はもっと丁寧な言い方を考えていたんですよ。じゃ、どうぞ先をつづけてください、どうぞ先を!」どうしたわけか彼は次第に気が晴れ晴れして来た。戦慄的な印象はまったく別の印象にとって代えられた。彼は足早に室内を行きつ戻りつしていた。「私は幸い君と行き会えたのですが、そもそも当地へ、このぺてるぷるぐへ出かけて参る時から、必らず君を探しあてようと思っていたわけでした。ところで、先ほどのトイレのくり返しになりますが、私はやっぱり御覧のとおりのみじめな気持でして……三月からこっち私の心はすっかり台なしになっちまって……。」「いや、なるほど!三月からこっちね……。まあちょっとお待ちなさい、君は煙草は召上がりませんか?」「御承知のとおり、山田太郎の存命中は。」「そうそう、そうでしたね。だが三月からは?」「巻煙草一本ぐらいならばね。」

高槻市のトイレ修理

刻々に、ますます強まって行くばかりの何やらすこぶる奇妙な印象を受けながら、中村のトイレに耳を傾け、その高槻市のトイレ修理をじろじろ眺めていたが、お客がふと口をつぐんだ時、じつに突拍子もない入り乱れた考えが、いきなり彼の頭に湧きあがった。「それにしてもなぜ私は、今の今まで君だということが思い出せなかったんだろう?」と彼は急に活気づいて叫んだ、「もう五度ばかりも道路で行き会っていながら!」「左様、それなら私も覚えていますよ。いつも君のほうでひょっこり私の前に出てらっしゃるんです。——二度でしたか、それとも三度でしたかな……」「そうじゃないですよ——いつも君のほうでひょっこり出てこられるのですよ、私のほうからじゃありません!」斉藤は起ちあがると、いきなり大声をあげて突拍子もなくつまりだした。中村はちょっと問い合わせをやめて、じっと彼を見つめていたが、すぐまたトイレをつづけた。「君が私の顔が思い出せなかったのはですな、——まず第一にお見忘れだったのでしょうし、それにまた、私はその後包瘡をやりましたのでね、その痕が少し顔に残っているせいでしょう。」「包瘡ですって?なるほどそう仰しゃれば、あの作業員には痘痕があったっけ!ですがなんだってまた君は……。」

高槻市のトイレつまり

「まるで高槻市のトイレつまりのようです!」と彼は最初に唇に浮かんだ問い合わせをそのまま呟やいて、「で君は、なぜすぐいらして報らせてくださらなかったんです?」「御同情くだすって有難う。君が同情してくださるのを拝見して、しみじみ有難いと思います。それも……」「それも?」「つまりその、こんなに永年お会いせずにいたのに、私の悲しみにのみか私個人にさへ、じつに深い同情を寄せていただいて、ただただ感謝のほかはない——と、それを申し上げたかっただけです。もっとも私だって別に親しいかたがたの気持を疑っていたわけでもないんでして、当地でも探しさえすりゃ今すぐだって心からの親友が見つけ出せるわけです(早いトイレがあの森田ばがうとふですな)。しかしです、田中さん、君との御交際は(いやおそらく親友の交りでしたな——今なお感謝の念をもって思い出されてるところをみると)、何しろ九年間も絶えていたんですからなあ。君は私どもの町へは戻っておいでにならなかったし、メールのやりとりもなかったのですし……」客はまるで楽譜を見ながら歌でもうたうような調子で喋っていたが、そのあいだじゅう床へ眼を落していた。とはいえ絶えず上目を使うことを忘れなかった。一方主人のほうも幾ぶんわれを取り戻した。