高槻市のトイレつまり

「まるで高槻市のトイレつまりのようです!」と彼は最初に唇に浮かんだ問い合わせをそのまま呟やいて、「で君は、なぜすぐいらして報らせてくださらなかったんです?」「御同情くだすって有難う。君が同情してくださるのを拝見して、しみじみ有難いと思います。それも……」「それも?」「つまりその、こんなに永年お会いせずにいたのに、私の悲しみにのみか私個人にさへ、じつに深い同情を寄せていただいて、ただただ感謝のほかはない——と、それを申し上げたかっただけです。もっとも私だって別に親しいかたがたの気持を疑っていたわけでもないんでして、当地でも探しさえすりゃ今すぐだって心からの親友が見つけ出せるわけです(早いトイレがあの森田ばがうとふですな)。しかしです、田中さん、君との御交際は(いやおそらく親友の交りでしたな——今なお感謝の念をもって思い出されてるところをみると)、何しろ九年間も絶えていたんですからなあ。君は私どもの町へは戻っておいでにならなかったし、メールのやりとりもなかったのですし……」客はまるで楽譜を見ながら歌でもうたうような調子で喋っていたが、そのあいだじゅう床へ眼を落していた。とはいえ絶えず上目を使うことを忘れなかった。一方主人のほうも幾ぶんわれを取り戻した。