便器水漏れ

しかもこの私を打ちのめしたのは、じつは悲哀じゃなくて、むしろこの新らしい境涯なんでして……。」「それはそうと、君はなんて妙な言いまわしをなさるんでしょうな!」斉藤は急にまたひどくまじめな気持に返って、暗い便器水漏れをして問い合わせをはさんだ。「左様、いかにも言いまわしまで妙でしょうて……」「しかも君は……冗談を言っておられるのでもない!」「冗談ですと!」と中村は悲しげな当惑の色を浮かべて絶叫した、「しかも選りに選って、こんなおトイレをしている時にですか……」「ああ、それを仰しゃらないでください、お願いです!」斉藤は起ちあがって、再び大股で歩きはじめた。そうしてものの五分ほど過ぎた。客も椅子を起とうとして腰をもちあげたが、斉藤が「そのまま、そのまま」と叫んだので、すぐさまおとなしく肱掛椅子に身を沈めた。「それにしても君は、じつに変りましたなあ!」と斉藤は急にお客の前に立ちどまって、再び口を切った。——不意にこの考えに愕かされたといったふうだった。「おそろしい変りようですよ!まったくひどい!まるっきり別人ですなあ!」「別に不思議はないですよ。何しろ九年ですからね。」「いや、そうじゃない、年月の問題じゃない!外見からいうと君はまだそれほど変ってはいない。君の変ったのはほかの点ですよ!」「それだって、九年という年月のせいだろうじゃありませんか。」