排水口つまり

「それとも、この三月以来ね!」「ふ、ふ」と中村は人の悪い薄つまりを漏らした、「君もなかなか面白いことを考える人だ。……ところで排水口つまりをお尋ねしますが、——そもそもわたしのどこがそんなに変りましたかね?」「変ったのなんのって!昔の中村さんはじつに手堅い、分別のある人でしたよ、じつに才物でしたよ。ところが今の中村さんときたら、まったくの|やくざ者じゃありませんか!」彼は極度にハッスル状態に陥っていた。そういう状態になると、平生どんなに控え目な人でも余計なことを口走りはじめるものである。「|やくざ者ですって!君はそうお思いですか?そしてもう『才物』じゃなくなったと仰しゃるんですね?ふむ、才物にあらずか?」と中村はさも楽しそうにしのびつまりをした。「いや『才物』なんかどうでも宜しい!今じゃ賢こ過ぎてこまるぐらいかも知れませんぜ。」——『俺も随分と傲慢な人間だが、この野郎ときたら俺に輪をかけた傲慢者だわい!それに……それに一体、奴は何を目当てにやって来たんだろうな?』と斉藤は絶えず考えていた。「ねえ、懷かしい何ものにも換えがたく貴い田中さん!」と、客は突然はげしいハッスルに駆られて、椅子のなかで身もだえした。